2014パタゴニア

年末から2月中旬までの日程を取ってやってきたパタゴニアの地。
悪天と強風で知られるパタゴニアだが、1ヶ月半待っても一度もまともにロッククライミングができそうな天気はやってこないという、予想を上回る悪天が続いた。

○アパートの写真

アイスギア等フル装備でこの地を訪れれば、やれたこともあっただろうがロッククライミングをすると決めてクライミングシューズしか持って来なかった僕たちは麓でボルダリングを楽しみながらも、悶々とした日々を過ごしていた。1月中旬、悪天期間の合間を縫って強引に山でのロッククライミングを試みる。内容的には特に難しくもなく足慣らし的トライであったが、パタゴニアのロッククライミングのポテンシャルを知るよい機会となった。

EL MOCHO 「VOIE DES BENITIERS 400m 6cC1」
1月17日
エル・チャルテン。フィッツロイ山群の拠点となる小さな町に僕らはアパートを借りてトライのときを待っていた。しかし、到着してから半月以上が経つというのにボルダリングと読書の日々が続いている。天気予報によれば、まともにロッククライミングするには、気温が低く風もありそうだが、もうジッとしているのは辛すぎた。晴天の予報2日間を狙って入山する。
アパートを朝出発し、観光地となっているトーレ湖までトレッキング道を2時間歩く。チロリアンブリッジで川を渡り、トーレ氷河を詰めて行くとNIPO
NINOと呼ばれるBCへ到着した。DesmochadaやFitz Roy方面を単眼鏡を使いながら偵察する。素晴らしい迫力。数百mの大岩壁を3つ継続してフィッツロイ山頂へ続くラインが特にカッコいい。この遠征の目標となりえる課題である。それらに比べると子供のようだが、綺麗で快適そうなEL
MOCHOが明日の課題である。高差は400m。

1月18日
先日の雪で標高を上げると雪が多く気温も低いので、この周辺では手ごろに取り付けて標高も2000mほどのEL MOCHOへ。北壁に走る顕著なクラックラインのフリー化トライをしようと取り付きに行くが、強風かつ非常に寒く。とても素手でクライミングできる状況でなかった。北壁のルートは諦め、東壁に変更。取り付までに濡れたミックス壁を1P伸ばして東壁側に回り込む。素手で氷に覆われたクラックに手を突っ込み非常に辛い登攀。手の感覚は無い。やっと取り付きについた頃には随分と時間がたってしまった。それでも、こちら側は、ちょうど風が吹き抜けない形状で登攀可能である。最初の2Pは少々脆さに注意しながらの登攀だったが、中盤以降は安定してきて、花崗岩の感触を楽しんだ。青い空に向かってフリクションの良い岩をグイグイと登っていく。核心の1P以外は5.9~5.11-位中々変化に富んだ14Pで終了。雪面はセロトーレに続いている。ここからの継続も楽しいだろう。同ルートを下降するが、かなり荒いエッジの立った花崗岩なのでスタックやロープの磨耗には要注意だ。22時BC帰着。

○帰りの強風写真。

○ボルダー写真。
キャプション:山の天気は悪くとも麓のチャルテンでは、ボルダリングができることが多く、ボルダラーとしてパタゴニアライフの大半を過ごした。

ティト・カラスコ西壁 新ルート「ATARI 300m 7a+」
3日後にパタゴニアを発つチケットを握り締め、PCのディスプレイに釘付けになっているクライマーがひとり。待ちに待った好天周期は皮肉にもフライト予定日の12日からやってくるようだ。1ヵ月半待って、やっときたチャンスを何とかして掴みたかった僕は、急遽チケットの変更をして2日間のクライミングを満喫した。

1日目:BCまでアプローチ。
○写真朝アプローチ中のティトカラスコ

2日目:狙うは、ティト・カラスコと言うとんがりピークの西壁。存在感のあるこの壁の正面はいまだ手付かず。早朝からアプローチし、傾斜のあるクラックから取り付いた。誰も触ったことのない手の切れそうなクラックの縁をとらえながら「これをやりにパタゴニアに来たんだよ!」とわめきながらクライミングを楽しんだ。5.11d~12a位のピッチが3ピッチ、その他も5.10~11程度の充実した内容で、全体の傾斜が非常に強く、強烈に疲れた。ピークはこれまでの降雪によって雪が多く登ることは叶わなず岩壁の終了点から、同ルートを懸垂下降した。BCに到着は22時。
エルチャルテンのバス出発時刻まであと10時間。
日程に余裕がありBCに残るジャンボとマスと別れ、1人で迷いやすい氷河とトレイルを夜通し歩き続けた。時に迷い絶望的になりながらも下界を目指す。夜が薄っすらと明ける頃にはトレイルを走って山小屋へ飛び込んだ。ビックリしている主人にタクシーを呼んでもらってから久しぶりに腰を下ろす。行動開始から26時間が経過していた。
○じゃりみちの写真

出発5分前にエルチャルテンのバスターミナルに到着することができ、私のパタゴニア遠征はチケットをゴミにすることなく幕を閉じた。
チャルテンでの愉快な生活を共にした仲間と横山家。楽しく充実したクライミングを共にしてくれたジャンボ、マス。早朝のダート道を飛ばしてくれたタクシードライバー。そして甲府で記録的な大雪(114㎝)の中、待っていてくれた家族に感謝です。ありがとう。
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